
会社を畳もうと思ったら、
「不動産の含み益」が
水面下で牙を剥いていた。
OISC飯塚税務会計事務所(東京都練馬区)|資産税専門の税理士・公認会計士
「会社の帳簿にある土地建物は3,000万円。だから清算しても税金なんて大したことない」——多くの社長が、この時点で大きな勘違いをしています。会社が長年保有してきた不動産の「時価と帳簿価額のギャップ(含み益)」こそ、清算課税で最大の爆弾です。ここを設計せずに解散すると、税負担が想定の3〜4倍に跳ね上がることもあります。
この記事の結論
会社が保有する不動産は、清算時に時価で処分・評価されるため、帳簿と時価の差額(含み益)が丸ごと法人税の課税対象になります。さらにそれを個人に分配すればみなし配当で追い課税——二段ロケットです。対策の中心は「解散前に、社長個人へ適正価格で売却する」こと。順番を1手変えるだけで、税負担を大幅に軽くできます。
1. なぜ、会社の不動産は含み益を抱えているのか?
会社が数十年前に取得した土地は、当時の価格で帳簿にのっています。減価償却は建物にしか適用されないため、土地の帳簿価額は取得時のまま。取得から30年、40年経過した会社では、帳簿の3〜5倍が時価というのはごく普通の光景です。
問題は、これが「毎期の決算書を見ていても現れない」こと。B/Sの土地3,000万円は、税務上は「3,000万円のまま」ですから、社長も税理士も日常業務ではその含み益に気づかないまま推移します。清算を検討して初めて、水面下の氷山が姿を現します。
2. 清算時、不動産にはこう課税される——4つの落とし穴
残余財産確定までに不動産を売却・評価すると、時価と帳簿の差額が譲渡益となり、通常の法人実効税率(約30%前後)で課税されます。
売却代金や現物分配された不動産の時価は、残余財産として社長個人に分配され、資本金等を超える部分がみなし配当として最大約50%の課税。
建物の売却・分配は課税売上となります。清算事業年度の消費税負担を見落として資金ショートするケースがあります。
残余財産を不動産のまま個人に渡すと、名義変更で登録免許税・不動産取得税がかかります(一部は非課税扱い)。
さらに残余財産分配時にみなし配当課税が上乗せ。合計で1回で1億円近い課税もあり得ます。
3. 実例:時価1.5億の土地を持つ会社を、どう畳むか?
【対策なし:解散して土地を売却して残余財産分配】
① 法人段階:譲渡益1.2億 × 実効税率 ≒ 約3,600万円 の法人税等
② 個人段階:残余財産 ≒ 1.14億/みなし配当 ≒ 1.04億 → 約5,000万円 の所得税等
→ 手取り:約6,000万円
【対策あり:解散前に社長個人へ土地を適正時価で売却】
① 会社は土地売却で1.2億の譲渡益 → 法人税等約3,600万円
② 社長個人は1.5億を会社に支払い、土地を取得(借入等で調達)
③ 会社に残った現金の一部を、解散前に役員退職金として支給し、法人税を圧縮
④ 残余財産を分配(みなし配当は大幅に減少)
→ 手取り試算:約7,500〜8,000万円/節税効果 1,500〜2,000万円
※実効税率・退職金の適正額・借入コスト等により結果は変動します。上記は理解のためのイメージです。
POINT 「個人への売却」は、退職金設計と組み合わせて初めて効く
解散前に個人へ売却するだけでは、法人段階の含み益課税は変わりません。売却で会社に入った現金を、退職金として個人に還流させ、法人所得を圧縮する——ここまでセットにして、初めて全体最適の設計になります。単発ではなく、順序を伴う「手順書」の設計が肝です。
4. 「いつ売るか」でも税金は変わる
| 売却のタイミング | 法人段階 | 個人段階 | 総合評価 |
|---|---|---|---|
| 解散前(通常年度)に売却 | 通常の法人税課税 | 退職金・借入等で調整可 | ◎ もっとも柔軟 |
| 解散前に個人へ売却 | 法人税課税は変わらず | その後の家賃収入は個人に | ◎ 資産承継にも有利 |
| 清算事業年度に売却 | 通常法人税+期ズレリスク | みなし配当で重課税 | △ 設計余地が乏しい |
| 現物分配(不動産のまま個人へ) | 時価で譲渡があったとみなす | 登免税・不動産取得税負担 | △ コスト重なりやすい |
⚠ 「社長への安値売却」は、税務調査で確実に狙われます
会社から社長個人への売却は、税務署の関心が最も高い取引の一つです。時価より安く売れば「役員賞与」認定で、法人税・所得税・住民税が三段で追い課税されます。不動産鑑定士による評価か、少なくとも複数の合理的な参考値(路線価×時価倍率、周辺取引事例)を根拠に、説明可能な時価で取引することが絶対条件です。
5. こんな社長は、いますぐご相談を
- 会社が20年以上前から保有している土地・建物がある
- 近隣の路線価が上昇しており、帳簿と時価が明らかに乖離している
- 清算を検討しているが、不動産の処分方法をまだ決めていない
- 「会社の土地を、そのまま自分の名義にすればいい」と思っていた
- 会社所有の自宅・店舗兼住宅がある
まとめ
不動産を持つ会社の清算は、「なんとなく解散」ではなく設計が9割の世界です。土地の含み益は氷山の水面下に隠れており、清算を意思決定した瞬間に一気に浮上します。しかし、解散前の売却・退職金設計・売却先の設定・タイミングを組み合わせれば、税負担を大きく圧縮できます。逆に、動き出してからでは打てる手が限られるのが厄介なところです。会社に古くからの不動産がある方ほど、「動く前に相談する」ことが唯一の正解です。
不動産を持つ会社の清算、まずは含み益の把握から
OISC飯塚税務会計事務所は、不動産所有会社の私的整理・清算を数多く手がけてきた資産税専門の税務会計事務所です。公認会計士・税理士の代表が、含み益の把握から売却手順・退職金設計・清算確定申告まで一貫して対応します。会社清算のご相談は有料です。オンライン対応可。
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相続・贈与/不動産の譲渡・確定申告/借地権・地代/事業承継・会社の解散
※本記事は債務超過に陥っていない会社の私的整理(黒字清算)を前提とした一般的な情報提供です。記載の税率・金額例はいずれも一例であり、個別の適用は不動産の時価・帳簿価額・保有期間・資本金等・会社規模・自治体・適用時点の税法により異なります。特に「個人への売却の時価」および「役員退職金の適正額」は、個別事案ごとに実質判断されます。具体的なご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。