
「自分の不動産を死後に区へ寄付したい」
「相続人にも一部だけ渡したい」
こうした相談は近年増えています。
ただ、寄付・遺贈・不動産売却・税務申告が絡むため、手続きは複雑です。
この記事では、
①被相続人が生前に行う手続き
②相続人が行う手続き
③税理士(遺言執行者)が行う手続き
の3つに分けて、実務ベースで分かりやすく解説します。
1、被相続人が生前に行う手続き
① 公正証書遺言の作成(必須)
今回のように
「相続人に一部を遺贈し、残りを区に寄付する」
というケースでは、遺言に次の内容を明記します。
- 不動産は遺言執行者が売却する
- 売却代金から
・相続税
・不動産売却に伴う所得税
・売却費用(仲介手数料など)
・遺言執行報酬
・税務申告報酬(相続税・所得税)
を支払う - 相続人に一定額を遺贈する
- 残額を区へ寄付する
- 税務申告も遺言執行者(税理士)に依頼する
これを遺言に書いておくことで、相続人の負担がほぼゼロになり、死後の手続きが圧倒的にスムーズになります。
② 区(寄付先)との事前相談
自治体は不動産そのものを受け取らず、換価(売却)した現金のみ受領という運用が一般的です。
事前に確認する内容
- 寄付の目的(福祉・子育て・文化など)
- 寄付金の使途指定の可否
- 寄付受領証明書の発行方法
③ マンションの資料整理
遺言執行者が売却しやすいよう、以下をまとめておくと良いです。
- 登記簿謄本
- 管理規約・長期修繕計画
- 管理費・修繕積立金の状況
- 修繕履歴
- 鍵の保管場所
④ 死後事務委任契約の締結
遺言では扱えない
- 役所届出
- 光熱費・携帯の解約
- 管理組合への連絡
- 遺品整理
などを委任します。
遺言+死後事務委任のセットが最も安全です。
2、相続人が行う手続き
相続人が受け取るのは一部の金銭のみですが、税務上は「相続人」として重要な役割があります。
① 相続税の申告
相続税は寄付予定でも遺産総額で課税されるため、相続人が申告者になります。
ただし、遺言で「相続税申告は遺言執行者(税理士)に依頼する」と書いてあれば、相続人は手続き不要です。
② 不動産売却による所得税申告
遺言執行者が売却しても、税務上は 相続人が売却した扱い になります。
そのため、譲渡所得税の申告は相続人の申告となります。
これも遺言で税理士に依頼する旨を明記しておけば、相続人は何もする必要がありません。
③ 寄付金控除(所得税)を使える
区への寄付は「特定寄付金」に該当するため、相続人は寄付金控除を使えます。
- 所得控除
- 税額控除(寄付金×40%)
これにより、相続人の税負担が軽くなり、結果として区に渡る金額が増えるというメリットがあります。
3、税理士(遺言執行者)が行う手続き
ここが実務の中心です。
① 遺言執行(不動産売却)
- マンションの現況確認
- 鍵の受領
- 不動産会社への査定依頼
- 売却活動(1〜3ヶ月)
- 売却代金の受領
② 税金・費用の支払い
売却代金から次を支払います。
- 相続税
- 譲渡所得税
- 仲介手数料
- 登記費用
- 遺言執行報酬
- 相続税申告報酬
- 所得税申告報酬
- 死後事務費用
これらはすべて相続財産から支払うため、相続人の持ち出しはゼロ。
③ 相続人に遺贈額を交付
遺言に従い、税金・費用を差し引いた後の財産から相続人に指定額を交付します。
④ 残額を区へ寄付
寄付金受領証明書を取得し、相続人の所得税申告に添付します。
⑤ 相続税申告・所得税申告
遺言で明記されていれば、税理士がすべて代行できます。
まとめ
寄付+一部遺贈は「遺言+税務+不動産」の総合設計が重要
今回のように「相続人に一部を遺贈し、残りを区へ寄付する」 というケースでは、
- 相続税
- 譲渡所得税
- 寄付金控除
- 遺言執行
- 不動産売却
- 死後事務
- 税務申告
が複雑に絡みます。
しかし、生前に遺言と契約を正しく整えておけば、死後の手続きはすべて税理士が一括で処理でき、相続人の負担はほぼゼロになります。
寄付を確実に実行したい方は、不動産・相続・税務を一気通貫で扱える専門家に相談することが最も安全です。