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公正証書遺言があっても、相続財産は「全員の合意」で自由に分けることができます ― 実務と税務の両面から、誤解の多いポイントを整理します ―

相続のご相談を受けていると、「公正証書遺言があるから、もう動かせないですよね?」とよく聞かれます。

 

いや、相続人全員が合意しているのであれば、遺言と異なる分け方は可能です。

ただし、法律と税務では考え方が異なります。
ここを正しく理解しておかないと、後から税務署とのやり取りが必要になったり、特例が使えなくなったりします。

 

以下では、実務の流れと相続税申告の注意点を、できるだけ分かりやすく整理します。

 

遺言は「最終意思」だが、家族の合意が優先される

民法は、遺言を尊重しつつも、相続人全員の合意による遺産分割を妨げないという立場を取っています。

ですので、

  • 遺言が古くなって現状に合わない
  • 不動産の管理を考えると別の人が持った方が良い
  • 税金の負担を調整したい

こうした事情がある場合、協議で柔軟に対応できます。

 

相続税申告は「実際に誰が取得したか」で判断されます

ここが最も誤解されやすい部分です。

相続税申告は、遺言の内容ではなく、最終的に確定した遺産分割協議の内容に基づいて行います。

つまり、

  • 遺言どおりに分けた → 遺言ベースで申告
  • 遺言と異なる分け方 → 協議書ベースで申告

という整理になります。

遺言書は提出不要ですが、税務署から確認が入ることもあるため、必ず保管しておきます。

 

手順

  1. 遺言内容の確認
  2. 相続人全員で協議(全員合意が前提)
  3. 遺産分割協議書の作成(実印+印鑑証明書)
  4. 名義変更・銀行手続き
  5. 相続税申告(協議書ベース)

 

税務上の注意点

専門家として特に気を付けているのは次の点です。

遺言と大きく異なる場合、税務署から確認が入ることがある

特に不動産の取得者が変わる場合は注意が必要です。

協議書・名義変更・申告内容は必ず一致させる

ここがズレると、税務署が「贈与では?」と疑うポイントになります。

小規模宅地等の特例は“誰が取得するか”で大きく変わる

不動産の取得者を誤ると、税額が数百万円単位で変わることがあります。

遺言執行者がいる場合は、同意が必要

勝手に協議を進めることはできません。

 

■ うっかりミス

  • 遺言と異なるのに協議書を作っていない
  • 協議書と申告内容が一致していない
  • 特例の適用者を誤っている
  • 名義変更が遅れて申告内容とズレる

 

まとめ

  • 申告の基準は「遺言」ではなく「最終的な分割結果」
  • 遺言と異なる場合は 必ず遺産分割協議書を作成
  • 遺言書は提出不要だが 保管は必須
  • 税額は「誰が取得するか」で大きく変わる
  • 協議前に 税務シミュレーションが不可欠

相続は、法律・税務・家族の事情が複雑に絡みます。
遺言があっても、家族全員が納得できる形に整えることが、結果として最もトラブルの少ない相続になります。

 

遺産分割協議と相続税申告の全体像 ―

 

図1:遺言と遺産分割協議の関係(法律構造)

┌──────────────┐

│   公正証書遺言(被相続人の最終意思) │

└──────────────┘

               ↓ ただし

┌────────────────────────┐

│   相続人全員の合意があれば「変更可能」 │

└────────────────────────┘

               ↓

┌────────────────────────┐

│   遺産分割協議(最終的に有効な分割内容)│

└────────────────────────┘

 

図2:実務フロー(遺言と異なる分け方をする場合)

① 遺言内容の確認

        ↓

② 相続人全員で協議(全員合意が必須)

        ↓

③ 遺産分割協議書を作成

        ↓

④ 名義変更・銀行手続き

        ↓

⑤ 相続税申告(協議書ベース)

 

図3:税務署の判断ポイント(相続税)

税務署が見るのは「遺言どおりか?」ではなく…

 

┌────────────────────────┐

│   実際に誰が取得したか(協議書の内容) │

└────────────────────────┘

※遺言は提出不要だが、確認資料として保管必須。

 

図4:申告書に反映される内容

【相続税申告書】

・各相続人の取得財産 → 協議書どおり

・小規模宅地等の特例 → 実際の取得者で判定

・配偶者控除 → 実際の取得額で計算

 

図5:税務リスク例

遺言:長男に不動産

協議:次男が取得

        ↓

税務署の見方

「長男 → 次男への贈与では?」という疑い

※協議書・名義変更・申告内容が一致していれば実務上は相続扱い。

 

図6:実務で絶対に守るべきポイント

✔ 協議書と名義変更と申告内容を一致させる

✔ 遺言と異なる場合は必ず協議書を作る

✔ 遺言書は提出不要だが保管する

✔ 不動産の取得者で税額が大きく変わる

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