OISC飯塚税務会計事務所|東京都練馬区高松・資産税専門の税理士・公認会計士

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「あの土地、忘れていませんか?」—— 亡くなった人の不動産を 全国一覧で調べられる新制度、始まりました。

相続実務/所有不動産記録証明制度

「あの土地、忘れていませんか?」——
亡くなった人の不動産を
全国一覧で調べられる新制度、始まりました。

OISC飯塚税務会計事務所(東京都練馬区)|資産税専門の税理士・公認会計士

相続の現場で、実務家がひそかに恐れているものがあります。それが「見えない不動産」——地方の山林、代替わりで名義が残ったままの共有持分、両親も存在を忘れていた田畑。相続手続きが終わったあとに突然出てくると、遺産分割のやり直し、追加の相続税申告、10か月の期限切れ……と、家族に重い負担を残します。この“見えない不動産”を、全国一括で調べられるようになったのが、2026年2月2日から始まった「所有不動産記録証明制度」です。

この記事の結論

相続人が法務局に請求することで、被相続人が全国で所有していた不動産を一覧化した証明書が取得できるようになりました。従来は市区町村ごとに名寄帳を取り寄せる必要があり、地方の物件は完全に見落とされがちでした。相続税申告の“抜け漏れ防止”に、極めて有効な武器です。

1. なぜこの制度が必要だったのか?

相続実務における「不動産の把握」は、これまで長年、実務家の悩みのタネでした。日本の不動産登記は市区町村ごとに管理されており、被相続人がどこの土地を持っていたかを網羅的に調べる仕組みが存在しなかったからです。

実務では、「名寄帳(なよせちょう)」という市区町村ごとの固定資産一覧に頼ってきました。しかし名寄帳には次のような限界があります。

  • その市区町村内の不動産しか記載されない
  • 被相続人が別の市町村に土地を持っていても、存在を知らなければ請求しようがない
  • 共有持分や非課税物件(山林の一部・私道等)は載らないケースがある

結果、「相続税申告が終わったあとに、遠方の共有山林が出てきた」「代替わりで存在を忘れていた田んぼが、10年後に固定資産税の督促で発覚した」といった事故が、実務では散見されていました。

2. 新制度の中身

項目 内容
制度名 所有不動産記録証明制度
開始日 2026年2月2日
請求先 法務局(オンライン請求も可能)
取得できるもの 被相続人名義の不動産を全国分一覧化した「所有不動産記録証明書」
請求できる人 相続人/遺言執行者/不動産所有者本人(生前は自分の分のみ)
手数料 1件につき数百円程度(詳細は法務局公表)

POINT 共有持分も一覧に反映される

共有物件、たとえば「兄弟で1/4ずつ相続した山林」のような持分も、被相続人名義の記録として証明書に反映されます。従来は「共有持分の存在を知っている家族しか請求できない」情報でしたが、今後は共有関係も網羅的に把握できるようになります。

3. 実務で特に効くのは、こんなケース

ケースA:遠隔地に不動産があるご家庭

ご本人は東京に住んでいるが、被相続人が地方出身で、田舎に実家・農地・山林を残していた——というパターン。相続人が正確な地番を知らないと、名寄帳の請求先すら分からず、実務では見落とされがちでした。新制度なら1回の請求で拾えます。

ケースB:数次相続・共有名義

祖父の代から相続登記されていない共有名義の土地は、権利者が何十人にも膨らみます。新制度は、被相続人の名義(持分を含む)で網羅的に検索できるため、忘れられた共有関係の発見にも有効です。

ケースC:生前の“棚卸し”

この制度は、生前にご本人が「自分名義の不動産の全容」を確認するためにも使えます。相続準備・生前整理の第一歩として、非常に強力なツールです。

⚠ 100%漏れなし、ではありません

証明書はあくまで不動産登記の記録に基づくため、次のようなケースは反映されない可能性があります。

被相続人名義になっていない実質所有の不動産(未登記建物、名義未変更など)
・登記情報の記載ゆらぎ(氏名の変換や旧字体等)で紐づかなかった物件
・登記外の権利関係(借地権など)

従来の名寄帳・登記簿確認と併用することで、初めて確実な把握になります。

4. 相続税申告における位置づけ

相続税申告では、被相続人の全財産を把握することが大前提です。不動産の見落としは、単なる評価漏れではなく、申告漏れ=過少申告加算税+延滞税のリスクに直結します。

特に、相続税申告期限(10か月以内)を過ぎてから物件が出てくると、修正申告と遺産分割協議のやり直しが同時に必要になります。前者は税務署への追加対応、後者は相続人間の再協議——手続きコストが跳ね上がる典型例です。

POINT 相続手続きの「早い段階」で取得を

この制度の最大の効果は「見落としを防ぐ」こと。だからこそ、相続発生後の戸籍収集と並行して、早い段階で証明書を取得するのが理想です。あとから発覚する不動産は、実務では必ず「なぜもっと早く分からなかったのか」という後悔とセットになります。

こんな方は、ぜひご活用を

  • 被相続人が地方出身で、実家以外の不動産の全容が分からない
  • 共有名義の土地の話を、家族から断片的に聞いたことがある
  • 数次相続で、祖父・曾祖父の代から未登記の物件がありそう
  • 生前整理の一環として自分名義の不動産を棚卸ししておきたい
  • すでに相続税申告を終えたが、後日発覚が怖い

まとめ

2026年2月に始まった「所有不動産記録証明制度」は、相続実務の風景を確実に変える改正です。従来「知らなければ辿り着けなかった」不動産に、法務局への1回の請求で全国レベルからアクセスできる——これは、相続税申告の抜け漏れ防止において非常に大きな進歩です。生前・相続後を問わず、不動産の全容把握が必要なタイミングで、真っ先に使うべきツールとしてご記憶ください。

「うちの相続でも使うべき?」——制度活用のご相談を

OISC飯塚税務会計事務所は、相続税申告と不動産財産の把握を得意とする資産税専門の事務所です。所有不動産記録証明書の請求、名寄帳・登記簿との突合、相続税申告への反映まで一貫してサポートします。初回面談は原則無料、オンライン対応可。

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OISC飯塚税務会計事務所(公認会計士・税理士 飯塚久仁生)
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相続・贈与/不動産の譲渡・確定申告/借地権・地代/事業承継・会社の解散

※本記事は2026年時点の法務省公表資料等に基づく一般的な情報提供です。請求手続き・手数料・記載範囲は個別事情および運用の変更により異なる場合があります。証明書の取得手続き自体は司法書士業務となる場合があります。具体的なご判断にあたっては、必ず税理士・司法書士等の専門家または法務局にご確認ください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。

「毎年110万円だから安心」—— その常識は2027年から通用しません。 いよいよ本格化する、生前贈与「7年加算」。

 

相続税/生前贈与7年加算

「毎年110万円だから安心」——
その常識は2027年から通用しません
いよいよ本格化する、生前贈与「7年加算」。

OISC飯塚税務会計事務所(東京都練馬区)|資産税専門の税理士・公認会計士

相続対策の王道といえば、暦年贈与(毎年110万円まで非課税で贈与する仕組み)。しかし2024年1月からの改正で、この「王道」に大きな見直しが入りました。相続開始前の贈与を相続財産に足し戻す期間が、3年から7年に延長——通称「7年加算」です。改正のスケジュールは段階的で複雑ですが、2027年1月からいよいよ本格的に影響が出始めます。「毎年110万円なら相続税と無関係」という説明は、もはや過去のもの。贈与記録の長期保存も、今から必須です。

この記事の結論

2024年1月1日以降の贈与から、相続財産への加算期間が3年 → 7年へ段階的に延長されます。2026年12月31日までの相続は従来どおり3年で処理されますが、2027年1月1日以降の相続から加算期間が徐々に延び、2031年1月以降の相続では丸ごと7年分が対象になります。延長された4年分については合計100万円まで加算不要という緩和もあります。実務上は、贈与記録を最低8〜10年は保存する体制が必要です。

1. そもそも「生前贈与加算」とは何か?

相続税法には、亡くなる直前の“駆け込み贈与”を封じる仕組みがあります。それが「生前贈与加算」です。

被相続人が亡くなる一定期間内に、相続人(または受遺者)へ贈与した財産は、相続財産に足し戻して相続税を計算する——という仕組みです。「亡くなる直前にたくさん贈与しても、結局相続税がかかりますよ」というブレーキ役です。

これまで、この加算期間は「相続開始前3年間」でした。今回の改正で、これが「相続開始前7年間」に延長されます。

2. 段階的な適用スケジュール

「2024年1月から一気に7年」——ではありません。制度は段階的に移行します。

相続開始日(亡くなった日) 加算対象となる贈与の期間
〜2026年12月31日 相続開始前3年間(従来どおり)
2027年1月1日〜2030年12月31日 2024年1月1日以降の贈与が順次加算対象に(実質3年〜7年へ徐々に延長)
2031年1月1日以降 相続開始前7年間すべてが加算対象(完全移行)

POINT 「2024/1/1以後の贈与」がスタート地点

制度の起点は2024年1月1日以降の贈与です。それ以前の贈与は、加算されるのは相続開始前3年分のまま。実務上は、2024年1月以降の贈与記録を漏れなく保存することが、以降のすべての相続対策の土台になります。

3. 延長された4年分の“救済措置”——合計100万円

7年に延ばすと言っても、あまりに厳しすぎる——という配慮から、次のような緩和措置が用意されています。

期間 加算のルール
相続開始前3年以内 全額が加算対象
相続開始前4〜7年前 合計から100万円を控除した残額が加算対象

つまり、延長された4年分については合計で100万円まで加算されない枠が用意されています。「4年前〜7年前の贈与の合計から100万円引いた残額を加算」——というイメージです。各年110万円まで非課税の枠自体は変わりませんが、亡くなる直前の期間だと相続税に取り込まれるという構造です。

4. 実務への影響——3つの重大な変化

① 「暦年贈与神話」の終わり

「毎年110万円ずつ贈与しておけば相続税とは無関係」——という説明は、今後、「亡くなる7年以上前に完了した贈与に限る」という但し書きが必ず必要になります。特に、80代以降でスタートする暦年贈与は、実質的に相続財産への足し戻しを覚悟しなければなりません。

② 贈与記録の長期保存が必須に

加算対象を判定するには、過去7年分の贈与記録を正確に把握する必要があります。従来は3年で十分でしたが、これからは10年程度は保存しておくのが安全です。贈与契約書・銀行振込記録・贈与税申告書の控えを、しっかり残しておきましょう。

③ 相続時精算課税の再評価

2024年からの改正で、相続時精算課税制度にも毎年110万円の非課税枠が新設されました。しかもこちらは相続時の足し戻しがなく、暦年贈与よりも実質的に有利な場面が増えています。従来「使いにくい」と敬遠されてきたこの制度が、俄然使い勝手のよい選択肢に浮上しています。

⚠ 相続人でない孫への贈与は、加算対象外

加算されるのは相続または遺贈により財産を取得した人への贈与です。相続人にならない孫、代襲相続人でない孫への贈与は加算対象外——という抜け道は今も健在です。ただし、その孫が遺贈で少額でも財産を受け取ると加算対象になるため、遺言との整合性を確認する必要があります。

5. 今からできる、3つの実務対応

① 贈与記録の整理と長期保存の仕組み化

  • 2024年1月以降の贈与について、贈与契約書・振込記録・贈与税申告書を1件ずつ整理する
  • 贈与者・受贈者・金額・時期を一覧化した贈与台帳を作る
  • 保存期間は最低10年を目安に

② 相続時精算課税との組み合わせを検討

特に高齢の贈与者から、まとまった財産を早期に移したい場合は、精算課税の110万円非課税枠が有効な選択肢になり得ます。ただし、精算課税は一度選ぶと二度と暦年贈与に戻れないため、慎重な判断が必要です。

③ 孫・ひ孫世代への“世代飛ばし”贈与

加算の対象外である孫・ひ孫への贈与は、今後より重要な設計項目になります。教育資金一括贈与や住宅取得等資金の贈与非課税など、既存の非課税制度との組み合わせも検討価値が上がっています。

こんな方は、早めに相談を

  • すでに暦年贈与を始めているが、記録を細かく残していない
  • 80代以降の親が、まとまった財産を子へ移したいと考えている
  • 相続人以外(孫など)への贈与を検討している
  • 相続時精算課税と暦年贈与の使い分けが分からない
  • 過去の贈与について、贈与税申告書の控えを紛失している

まとめ

生前贈与7年加算は、2027年から実務にジワジワと影響が出始め、2031年に完全移行します。時間を味方につけた贈与プランと、贈与記録の長期保存——この2つが、これからの相続対策のスタンダードです。相続時精算課税の使い方も含めて、5年先・10年先を見据えた設計を、今から始めておきましょう。

7年加算時代の贈与プラン、シミュレーション承ります

OISC飯塚税務会計事務所は、相続・贈与・不動産を専門とする資産税専門の事務所です。改正後のスケジュールを踏まえた暦年贈与プラン、相続時精算課税との使い分け、贈与記録の整備までトータルにご支援します。初回面談は原則無料、オンライン対応可。

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相続・贈与/不動産の譲渡・確定申告/借地権・地代/事業承継・会社の解散

※本記事は2026年時点の相続税法および国税庁公表資料等に基づく一般的な情報提供です。生前贈与加算・相続時精算課税・各種非課税制度の適用は、贈与者・受贈者の関係、贈与時期、財産の内容、および適用時点の税法により異なります。具体的なご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。

債務超過ではない会社の私的整理(黒字廃業)という選択

70代社長/会社の出口戦略

黒字なのに、会社を畳む——。
「黒字廃業」という賢い選択が、
いま静かに広がっています。

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「息子は継がない。従業員は皆、独立していった。会社は今も黒字だが、自分もそろそろ引退したい」——70代の社長からよくいただく相談です。廃業=失敗、というイメージは過去のもの。債務超過ではない会社の私的整理(黒字廃業)は、いま最も合理的な選択肢のひとつです。ただし、選び方と実行のタイミングを間違えると、手元に残るお金は大きく変わります。

この記事の結論

黒字の会社を閉じるときの出口は、大きく①M&A売却/②休眠会社/③私的整理(清算)の3つ。それぞれ「向く社長」がはっきり分かれます。特に後継者不在で、事業価値も限定的な小規模会社は、清算(黒字廃業)が手取り・時間・精神的負担のすべてで有利になるケースが多いのが実務の実感です。

1. なぜいま「黒字廃業」が増えているのか?

中小企業の後継者不在率は、いまも50%前後で推移しています。中でも70代以上の経営者は「息子は東京で自分の道を歩んでいる」「従業員はもう独立した」「取引先も自分の代で完結している」というケースが多く、会社を存続させる意味そのものが薄れている状態にあります。

にもかかわらず「畳むと決断できない」のは、次のような誤解があるからです。

  • 廃業=倒産のイメージが強く、取引先や従業員に申し訳ないと感じてしまう
  • 「M&Aで売れば数億円」という広告を見て、売却できるはずと信じている
  • 手続きが煩雑で、何から始めればいいか分からない

しかし、実際の現場では年商1〜3億円クラスの小規模会社の多くはM&A市場では買い手がつきにくく、休眠にしても毎年の均等割・税務申告のコストが残ります。「畳む」という選択が、経済合理性から言って一番自然、という状況が広がっています。

2. 3つの出口を、正面から比較する

比較項目 M&A売却 私的整理(清算) 休眠会社
手続き期間 半年〜2年(相手次第) 2〜3か月 1週間程度
手元に残る現金 売却価格による(不確定) 残余財産をほぼ全額 会社に残ったまま
毎年のコスト 売却まで通常運営 終了後は不要 均等割7万円+申告
従業員・取引先対応 新オーナーが継続雇用 円満な整理が可能 実質的には終了
向いている社長 事業に独自価値がある 後継者不在・小規模 再開の可能性がある
精神的負担 交渉が長く負担大 短期集中で終わる 意思決定を先送り

POINT 「休眠」が一番ラクに見えるが、実は損しやすい

休眠は意思決定の先送りにすぎません。毎年の均等割・申告費用が続くうえ、社長がお亡くなりになると相続財産に会社株式が含まれ、「相続人が誰も動かせない会社」という重い負債を残しがちです。「後で考える」で放置した休眠会社が、数十年後に相続実務で大きな問題になっているケースが実際にあります。

3. 黒字廃業(清算)が、いちばん向いているのはこんな社長

  • 後継者がおらず、従業員も雇用継続の意思がない
  • 取引先が固定化されており、社長引退で自然に業務が完結する
  • 会社に不動産・預金・保険積立など、それなりの資産が残っている
  • M&A仲介にも打診したが、買い手が現れない・条件が合わない
  • そもそも「早く楽になりたい」が本音である

特に注目すべきは「会社に残った資産を、社長個人にどう戻すか」という点です。清算では役員退職金の支給と、残余財産の分配を組み合わせることで、税負担を最小化しながら手元に現金を戻すことが可能です(この設計論は別記事「清算時の退職金設計術」で詳述します)。

4. いつから準備すべきか——最適なタイムライン

2年前
構想フェーズ

出口の方針を決める(M&A打診と並行)。役員退職金の準備を始める好機。

1年前
整理フェーズ

取引先への挨拶回り、契約の巻き取り、不動産の売却検討など資産の現金化準備。

解散決議
実行フェーズ

株主総会で解散決議 → 清算人選任 → 清算事業年度2〜3か月で残余財産分配へ。

清算結了
終了フェーズ

残余財産確定・分配 → 清算結了登記 → 税務署への清算確定申告で完了。

⚠ 「もう遅い」と言われる前に、選択肢を並べておく

社長が体調を崩されてから慌てて動き出すと、退職金の準備も不動産の整理もままなりません。元気なうちに「並べておく」だけで結論は先送りしていい——これが実務の鉄則です。決めるのはいつでもできますが、選択肢を作る作業には時間が要ります。

まとめ

「黒字廃業」は、経済合理性の観点からいえば、後継者不在の小規模会社にとって最も自然な出口です。ネガティブなイメージから躊躇される方が多いのですが、実際には手取り・時間・精神的負担のすべてで有利になるケースが少なくありません。M&A・休眠・清算の3択を並べたうえで、ご自身の会社にとってどれが合理的かを、冷静に比較する時間をぜひ取ってください。

「うちの会社は、どの出口が向いていますか?」——まずはご相談ください

OISC飯塚税務会計事務所は、私的整理による会社清算・事業承継に強い資産税専門の税務会計事務所です。公認会計士・税理士の代表が、貴社に合った出口を一緒に検討します。会社清算に関する 面談は有料です。オンラインにも対応しています。

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※本記事は債務超過に陥っていない会社の私的整理(黒字廃業)を前提とした一般的な情報提供です。債務超過の会社の整理には別途、法的整理(破産・特別清算等)や金融機関との調整が必要となり、本記事の枠外です。個別の判断にあたっては、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。

会社清算時の役員退職金利用法

会社清算/役員退職金の設計

同じ資産1億円の会社でも、
清算のやり方で手取りが1,500万円変わります
——役員退職金を「使い倒す」設計術。

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「会社を畳んで、社長個人にお金を戻すだけ」——そう思っていませんか? 実は、この“戻し方”ひとつで、社長の手取り額は数百万〜数千万円単位で変わります。カギを握るのは「役員退職金」と「みなし配当」の税率差。ここを設計せずに清算に入ってしまう会社が、実務では驚くほど多いのが現実です。

この記事の結論

清算で会社のお金を個人に戻す方法は2つ——①解散前に役員退職金として支給/②残余財産の分配(みなし配当)。前者の税率は実効10〜20%前後、後者は最大約50%。同じ金額を戻すのに、税負担が2〜3倍違ってきます。順番を間違えないだけで、手取りは大きく変わります。

1. なぜ「役員退職金」がそんなに強いのか?

役員退職金は、日本の税制で最も優遇されている所得のひとつです。理由は3つの優遇が同時に効くから。

退職所得 =(退職金 − 退職所得控除)× ½ ・退職所得控除:勤続20年超なら「800万円+70万×(勤続年数−20年)」/・「1/2課税」で税率が半分に/・分離課税で他の所得と分けて計算される
優遇項目 内容 効果
退職所得控除 勤続年数に応じた大きな控除枠 30年勤続なら1,500万円が非課税
1/2課税 控除後の金額に½を掛けてから税率適用 実効税率が半分近くに
分離課税 給与や配当と合算せず単独計算 累進税率の跳ね上がりを回避

結果として、退職金の実効税率は10〜20%台に収まるケースが多く、これに対して残余財産分配(後述のみなし配当)は最大約50%までいきます。ここに「使い倒す」余地があるわけです。

2. 「残余財産分配(みなし配当)」の重い税負担

会社清算で株主に分配されるお金のうち、資本金等を超える部分は税務上「配当」とみなされ、社長個人の総合課税の配当所得として課税されます。給与や年金と合算されるため、累進税率が跳ね上がりやすい構造です。

みなし配当 = 残余財産分配額 − 資本金等の額 例)残余財産1億円/資本金等1,000万円 → みなし配当9,000万円。ここに所得税+住民税で最大約50%。

⚠ 何もせず解散すると、この「重い方」の課税が丸ごと来ます

解散前に退職金を出さないまま清算に入ると、会社の残余財産すべてが「みなし配当」として課税されます。退職金を先に出しておけば、その分だけ残余財産が減り、みなし配当も減る——という単純な理屈です。順番を間違えるだけで、社長の手元に残るお金は2〜3割変わってきます。

3. 実例:資産1億円の会社を、どう畳むか

CASE60歳社長・勤続30年・会社純資産1億円・資本金1,000万円

【対策なし:解散して全額を残余財産分配した場合】
みなし配当:1億円 − 資本金等1,000万円 = 9,000万円
→ 総合課税で最高税率帯にのり、税金約4,500万円/手取り約5,500万円。

【退職金設計あり:解散前に退職金5,000万円を支給した場合】
① 退職所得控除:800万 + 70万×10年 = 1,500万円
② 課税退職所得:(5,000万 − 1,500万)× ½ = 1,750万円
③ 所得税+住民税:約550万円/退職金の手取り約4,450万円
残余財産分配は5,000万円(うちみなし配当4,000万円)
④ みなし配当の税金:約1,450万円/分配の手取り約3,550万円
合計手取り:約8,000万円(節税効果約1,500〜2,500万円

※実効税率は個々の所得・自治体・控除により変動します。上記は理解のためのイメージであり、実額をお約束するものではありません。

POINT 退職金は「解散前」に出すのが原則

解散決議後の役員退職金は、税務上の合理性を問われるリスクがあります。「退任 → 退職金支給 → 解散決議 → 清算」という順番で組むのが基本設計。同じ額を出しても、順番だけで税務署の目線がまったく変わります。

4. 退職金の「上限」を決める——功績倍率法

退職金は青天井ではありません。過大退職金と認定されると法人税で経費否認 → 個人でも役員賞与課税のダブルパンチになります。実務で広く使われる目安が「功績倍率法」。

適正退職金 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率 功績倍率の目安:代表取締役 3.0倍/専務 2.5倍/常務 2.3倍/取締役 2.0倍/監査役 1.5倍
例)月額報酬80万円 × 勤続30年 × 3.0 = 適正退職金7,200万円

⚠ 「最終報酬月額」を清算直前だけ上げるのは危険

退職金を大きくしたいがために、退任直前だけ役員報酬を跳ね上げる——これは典型的な否認パターンです。税務署は「不相当に高額な部分」として否認する権限を持っており、遡って役員報酬の変更経緯まで見られます。報酬設計は数年前から段階的にが鉄則です。

5. こんな社長は、いますぐ相談を

  • 2〜3年以内の引退を考えているが、役員退職金の準備をしていない
  • 会社に純資産が5,000万円以上残っている
  • 「解散したら、あとは税理士がやってくれる」と思っている
  • 役員報酬を、なんとなく毎年同じ額で払い続けている
  • すでに解散決議をしたが、退職金はまだ支給していない

まとめ

清算時の手取り最大化は、「退職金 → 残余財産分配」の順番と金額設計が9割です。ゼロから対策するより、解散2〜3年前から報酬設計を含めて準備を始めるのがベスト。会社の資産規模がある程度大きい方ほど、効果金額は大きくなります。「せっかく貯めた会社の資産を、なぜ半分も税金で持っていかれるのか」——そう感じたら、それはまだ設計の余地があるサインです。

清算による退職金・残余財産分配の税務設計、ご相談ください

OISC飯塚税務会計事務所は、私的整理による会社清算で、退職金の設計から残余財産の分配・清算確定申告まで一気通貫で対応します。公認会計士・税理士の代表が直接担当。会社清算のご相談は有料です。オンライン対応可。

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※本記事は債務超過に陥っていない会社の私的整理(黒字清算)を前提とした一般的な情報提供です。記載の税率・金額例・功績倍率はいずれも一例であり、個別の適用は勤続年数・報酬水準・会社規模・自治体・適用時点の税法により異なります。特に功績倍率および過大退職金の判定は事案ごとに実質判断されます。具体的なご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。

会社廃業の際は、不動産の含み益に注意を!



会社清算/不動産所有会社の実務

会社を畳もうと思ったら、
「不動産の含み益」が
水面下で牙を剥いていた。

OISC飯塚税務会計事務所(東京都練馬区)|資産税専門の税理士・公認会計士

「会社の帳簿にある土地建物は3,000万円。だから清算しても税金なんて大したことない」——多くの社長が、この時点で大きな勘違いをしています。会社が長年保有してきた不動産の「時価と帳簿価額のギャップ(含み益)」こそ、清算課税で最大の爆弾です。ここを設計せずに解散すると、税負担が想定の3〜4倍に跳ね上がることもあります。

この記事の結論

会社が保有する不動産は、清算時に時価で処分・評価されるため、帳簿と時価の差額(含み益)が丸ごと法人税の課税対象になります。さらにそれを個人に分配すればみなし配当で追い課税——二段ロケットです。対策の中心は「解散前に、社長個人へ適正価格で売却する」こと。順番を1手変えるだけで、税負担を大幅に軽くできます。

1. なぜ、会社の不動産は含み益を抱えているのか?

会社が数十年前に取得した土地は、当時の価格で帳簿にのっています。減価償却は建物にしか適用されないため、土地の帳簿価額は取得時のまま。取得から30年、40年経過した会社では、帳簿の3〜5倍が時価というのはごく普通の光景です。

問題は、これが「毎期の決算書を見ていても現れない」こと。B/Sの土地3,000万円は、税務上は「3,000万円のまま」ですから、社長も税理士も日常業務ではその含み益に気づかないまま推移します。清算を検討して初めて、水面下の氷山が姿を現します。

2. 清算時、不動産にはこう課税される——4つの落とし穴

法人税(清算事業年度)

残余財産確定までに不動産を売却・評価すると、時価と帳簿の差額が譲渡益となり、通常の法人実効税率(約30%前後)で課税されます。

みなし配当(個人)

売却代金や現物分配された不動産の時価は、残余財産として社長個人に分配され、資本金等を超える部分がみなし配当として最大約50%の課税。

消費税(建物部分)

建物の売却・分配は課税売上となります。清算事業年度の消費税負担を見落として資金ショートするケースがあります。

現物分配の登録免許税・不動産取得税

残余財産を不動産のまま個人に渡すと、名義変更で登録免許税・不動産取得税がかかります(一部は非課税扱い)。

法人段階の税金 =(時価 − 帳簿価額)× 実効税率 例)時価1.5億 − 帳簿3,000万 = 譲渡益1.2億 → 法人税等 約3,600万円
さらに残余財産分配時にみなし配当課税が上乗せ。合計で1回で1億円近い課税もあり得ます。

3. 実例:時価1.5億の土地を持つ会社を、どう畳むか?

CASE純資産1億円(土地時価1.5億/帳簿3,000万)・資本金1,000万円

【対策なし:解散して土地を売却して残余財産分配】
① 法人段階:譲渡益1.2億 × 実効税率 ≒ 約3,600万円 の法人税等
② 個人段階:残余財産 ≒ 1.14億/みなし配当 ≒ 1.04億 → 約5,000万円 の所得税等
→ 手取り:約6,000万円

【対策あり:解散前に社長個人へ土地を適正時価で売却】
① 会社は土地売却で1.2億の譲渡益 → 法人税等約3,600万円
② 社長個人は1.5億を会社に支払い、土地を取得(借入等で調達)
③ 会社に残った現金の一部を、解散前に役員退職金として支給し、法人税を圧縮
④ 残余財産を分配(みなし配当は大幅に減少)
→ 手取り試算:約7,500〜8,000万円節税効果 1,500〜2,000万円

※実効税率・退職金の適正額・借入コスト等により結果は変動します。上記は理解のためのイメージです。

POINT 「個人への売却」は、退職金設計と組み合わせて初めて効く

解散前に個人へ売却するだけでは、法人段階の含み益課税は変わりません。売却で会社に入った現金を、退職金として個人に還流させ、法人所得を圧縮する——ここまでセットにして、初めて全体最適の設計になります。単発ではなく、順序を伴う「手順書」の設計が肝です。

4. 「いつ売るか」でも税金は変わる

売却のタイミング 法人段階 個人段階 総合評価
解散前(通常年度)に売却 通常の法人税課税 退職金・借入等で調整可 ◎ もっとも柔軟
解散前に個人へ売却 法人税課税は変わらず その後の家賃収入は個人に ◎ 資産承継にも有利
清算事業年度に売却 通常法人税+期ズレリスク みなし配当で重課税 △ 設計余地が乏しい
現物分配(不動産のまま個人へ) 時価で譲渡があったとみなす 登免税・不動産取得税負担 △ コスト重なりやすい

⚠ 「社長への安値売却」は、税務調査で確実に狙われます

会社から社長個人への売却は、税務署の関心が最も高い取引の一つです。時価より安く売れば「役員賞与」認定で、法人税・所得税・住民税が三段で追い課税されます。不動産鑑定士による評価か、少なくとも複数の合理的な参考値(路線価×時価倍率、周辺取引事例)を根拠に、説明可能な時価で取引することが絶対条件です。

5. こんな社長は、いますぐご相談を

  • 会社が20年以上前から保有している土地・建物がある
  • 近隣の路線価が上昇しており、帳簿と時価が明らかに乖離している
  • 清算を検討しているが、不動産の処分方法をまだ決めていない
  • 「会社の土地を、そのまま自分の名義にすればいい」と思っていた
  • 会社所有の自宅・店舗兼住宅がある

まとめ

不動産を持つ会社の清算は、「なんとなく解散」ではなく設計が9割の世界です。土地の含み益は氷山の水面下に隠れており、清算を意思決定した瞬間に一気に浮上します。しかし、解散前の売却・退職金設計・売却先の設定・タイミングを組み合わせれば、税負担を大きく圧縮できます。逆に、動き出してからでは打てる手が限られるのが厄介なところです。会社に古くからの不動産がある方ほど、「動く前に相談する」ことが唯一の正解です。

不動産を持つ会社の清算、まずは含み益の把握から

OISC飯塚税務会計事務所は、不動産所有会社の私的整理・清算を数多く手がけてきた資産税専門の税務会計事務所です。公認会計士・税理士の代表が、含み益の把握から売却手順・退職金設計・清算確定申告まで一貫して対応します。会社清算のご相談は有料です。オンライン対応可。

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OISC飯塚税務会計事務所(公認会計士・税理士 飯塚久仁生)
東京都練馬区高松6-21-18/都営大江戸線 光が丘駅より徒歩圏
相続・贈与/不動産の譲渡・確定申告/借地権・地代/事業承継・会社の解散

※本記事は債務超過に陥っていない会社の私的整理(黒字清算)を前提とした一般的な情報提供です。記載の税率・金額例はいずれも一例であり、個別の適用は不動産の時価・帳簿価額・保有期間・資本金等・会社規模・自治体・適用時点の税法により異なります。特に「個人への売却の時価」および「役員退職金の適正額」は、個別事案ごとに実質判断されます。具体的なご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。

事業部分と居住部分が混在する建物の 3,000万円控除の「複雑さ」

 

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事業部分と居住部分が混在する建物の
3,000万円控除の「複雑さ」

― 店舗併用住宅・自宅兼事務所を売るときの注意点 ―
譲渡所得税 3,000万円控除 店舗併用住宅 居住用財産 不動産売却

📋 この記事の要点

  • 3,000万円控除は、建物全体に当然に使えるわけではなく、原則として居住用部分に限られる
  • 事業用と居住用が混在する建物では、建物・土地・取得費・譲渡費用すべてを按分する必要がある
  • 過去に事業経費にしていた部分を「全部自宅」とするのは危険。過去の申告との整合性が問われる
  • 金額が大きく失敗のダメージも大きいため、自己判断は避け、譲渡所得に慣れた税理士に相談すべき

1結論 ― 「自宅を売ったから3,000万円控除」とは限らない

自宅を売却した場合、一定の要件を満たせば「居住用財産の3,000万円特別控除」が使える可能性があります。しかし、ひとつの建物を、

  • 1階は店舗・事務所・作業場、2階は自宅
  • 一部を事業用、残りを居住用
  • 自宅兼事務所として長年使用

という形で使っていた場合、この3,000万円控除の判断は一気に複雑になります。単純に「自宅を売ったのだから3,000万円控除が使える」とはなりません。

国税庁の整理

国税庁も、店舗併用住宅を売った場合に3,000万円控除等の特例を受けられるのは、原則として「自分の居住の用に使っていた部分に限られる」と説明しています。居住用部分が全体のおおむね90%以上である場合には全体を居住用として扱える可能性がありますが、そうでなければ居住用部分と事業用部分を分けて考える必要があります。(国税庁 No.3452)

つまり、事業用と居住用が混在している建物では、3,000万円控除が全部に使えるのか、一部だけなのか、そもそもどこまでが居住用なのかを慎重に判断しなければなりません。この判断は素人判断ではかなり危険です。税理士報酬が高く見えたとしても、譲渡金額が大きい不動産売却では、専門家に依頼すべき場面です。

23,000万円控除は「建物全体」に当然使えるわけではない

居住用財産の3,000万円特別控除は、マイホームを売却した場合に、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。(国税庁 No.3302)ここだけ聞くと非常に分かりやすい制度に見えますが、問題は、売却した建物が純粋なマイホームではない場合です。

  • 1階を店舗、2階を自宅として使っていた
  • 自宅の一室を事務所として使っていた
  • 建物の一部を賃貸していた
  • 昔は事業用だったが、途中から自宅として使っていた
  • 昔は自宅だったが、売却前は事業用になっていた
  • 親の代から店舗兼住宅として使っていた
  • 建物の登記上の種類が「居宅・店舗」になっている
  • 固定資産税の資料上、住宅部分と非住宅部分が分かれている

このような場合、3,000万円控除の対象になるのは、原則として居住用部分です。事業用部分まで当然に3,000万円控除の対象になるわけではありません。(国税庁 No.3452)ここを間違えると、申告内容が大きく誤ります。

3複雑になる6つの理由

1

建物を按分しなければならない

「だいたい半分くらい自宅です」では足りません。建物図面・登記事項証明書・固定資産税課税明細書・建築確認資料・間取り・実際の使用状況などを確認し、合理的に区分する必要があります。国税庁の作成コーナーでも、家屋のうち居住の用に供している部分を算式により計算する扱いが示されています。(計算サイト)

2

土地も按分しなければならない

建物が居住用と事業用に分かれる場合、敷地も同様に区分します。駐車場、店舗用の出入口、庭・通路の用途、事業用倉庫、敷地の一部貸付、途中での利用変更などがあると、土地の按分はさらに面倒になります。土地全体を何となく自宅の敷地として扱うと、税務署から見たときに問題になる可能性があります。

3

「90%以上ルール」を誤解しやすい

居住用部分がおおむね90%以上なら全体を居住用として扱える可能性があります(国税庁 No.3452)が、どの面積を基準にするか、実際の使用状況、一時的か長年か、図面と実態の相違などで判断が分かれます。過去にその部分を事業用として経費計上していた場合、完全な居住用だったと主張するのは不自然になることがあります。

4

過去の事業所得・不動産所得の申告と整合性が必要

減価償却費・固定資産税・火災保険料・修繕費・水道光熱費・通信費・住宅ローン利息の一部・事業用設備費などを過去に事業経費にしていた場合、売却時だけ「全部自宅です」と処理するのは危険です。税務署は過去の申告内容との整合性を見ます。

5

取得費・譲渡費用も分ける必要がある

建物・土地の取得費、仲介手数料、測量費、解体費、登記費用、印紙代、過去の増改築費、減価償却費などを、居住用部分と事業用部分にどう分けるか。ここを間違えると、3,000万円控除を適用する前の譲渡所得そのものが変わります。特に過去に事業用部分の減価償却をしていた場合、取得費の計算はさらに複雑になります。

6

他の特例との関係も出てくる

所有期間10年超の軽減税率、事業用資産の買換え特例、収用等の5,000万円控除、公拡法等の1,500万円控除、相続空き家の3,000万円控除、共有者ごとの適用、親族間売買の制限、買換え特例との選択など。軽減税率は3,000万円控除と重ねて受けられる一方、買換え特例等との関係には注意が必要です。(国税庁 No.3305)店舗併用住宅の買換えでは、居住用部分は居住用財産の特例、店舗用部分は事業用資産の買換え特例という整理も示されています。(国税庁 No.3455)

💡 つまり、ひとつの建物を売っただけでも、税務上は複数の資産を売ったように分けて考えることがあります。ここが、事業併用住宅の譲渡所得申告の難しいところです。

4自分で申告して失敗すると、節税どころではない

3,000万円控除は、税額への影響が非常に大きい特例です。少しの判断ミスでも、所得税・住民税・復興特別所得税を含めた負担が大きく変わります。不動産売却は金額が大きいため、税理士報酬を惜しんで自己判断した結果、後から多額の税金・加算税・延滞税が発生することもあり得ます。

⚠️ 純粋な自宅を売っただけで資料も揃い要件も明らかなケースなら、自分で申告できる場合もあります。しかし事業用部分と居住用部分が混在している建物は別です。この場合は「3,000万円控除が使えるか」だけでなく、「どの部分に、いくら使えるか」を判断しなければなりません。素人判断で処理するのは危険です。

5高い金を払ってでも税理士に頼むべき理由

税理士報酬だけを見ると高いと感じるかもしれません。しかし、事業用と居住用が混在する不動産売却で税理士が行うのは、単なる申告書作成ではありません。実際には、次のような税務判断そのものを行います。

🧮 税理士が行う判断

  • 3,000万円控除の対象になる居住用部分の判定
  • 建物と土地の按分
  • 取得費の確認
  • 過去の減価償却費の確認
  • 譲渡費用の整理
  • 過去の確定申告との整合性確認
  • 他の特例との有利不利判定
  • 税務署に説明できる資料の整理
  • 申告書への適切な反映

特に、売却金額が数千万円から数億円になる不動産では、税理士報酬を惜しむべきではありません。安く済ませようとして間違えるより、最初から専門家に依頼した方が、結果的に安全で、手取り額を守れる可能性が高くなります。

6相談時に用意すべき資料

📑 税理士に渡したい資料

  • 売買契約書
  • 譲渡費用の領収書
  • 登記事項証明書
  • 固定資産税課税明細書
  • 建物図面・間取り図
  • 建築時の契約書・請求書
  • 増改築時の資料
  • 過去の確定申告書
  • 青色決算書・収支内訳書
  • 減価償却費の計算明細
  • 事業用として使っていた部屋や面積が分かる資料
  • 居住開始時期・事業開始時期・廃業時期が分かる資料
  • 公共事業や収用が絡む場合は、補償金内訳書や証明書

資料が多いほど、正確な判断ができます。逆に、資料がない状態で「たぶん自宅です」「たぶん全部3,000万円控除で大丈夫です」という申告をするのは危険です。

まとめ

ひとつの建物を事業部分と居住部分として使っている場合、3,000万円控除は非常に複雑です。ポイントは、次の一言に尽きます。

最重要ポイント

3,000万円控除は建物全体に自動的に使えるわけではなく、
原則として居住用部分にしか使えません

居住用部分と事業用部分の按分、土地の按分、過去の減価償却との整合性、取得費と譲渡費用の配分、他の特例との関係、税務署に説明できる資料の整理――これらを正しく処理しなければ、せっかくの3,000万円控除も申告ミスの原因になります。

特に、店舗併用住宅、自宅兼事務所、自宅兼賃貸物件、元事業用建物を売却する場合は、自己判断での申告は避けるべきです。税理士報酬が高く感じられても、そこを節約する場面ではありません。

現実的にいちばん安全な方法

高い金を払ってでも、譲渡所得に慣れた税理士に相談すべき
それが、結果的に手取りを守る方法です

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OISC飯塚税務会計事務所(東京都練馬区)|資産税専門

土地が道路や公共事業で買い取られたとき。あるいは、親の相続で銀行に手続きを相談したとき。「税金の申告は、こちらの税理士さんにお任せいただけます」——役所や金融機関から、そう“親切に”税理士を紹介されることがあります。報酬は驚くほど安く、公的機関や銀行のお墨付きだから安心に見える。ところが、その「お抱えの税理士」に任せた結果、本来なら払わずに済んだ税金を、気づかぬうちに倍近く納めていた——そんなケースが実際にあるのです。

「紹介」の裏に、あなたには見えないインセンティブがある

まず知っておいていただきたいのは、その税理士にとっての“本当の顧客”は誰かという点です。

役所や銀行から紹介される税理士にとって、継続的に仕事を運んでくれる相手はその役所であり、その銀行です。あなたは、その事業や相続手続きが終われば関係の切れる“一度きりのお客様”にすぎません。人は、無意識のうちに「継続してくれる相手」を大切にします。つまり——

紹介税理士のインセンティブは「あなたの税金を最小化すること」ではなく、「案件を円滑に、標準的に片づけて、紹介元との関係を保つこと」に働きやすい。ここに、依頼者との利益のズレが生まれます。

たとえば信託銀行の相続手続き(遺産整理業務)では、銀行自身は税務申告を行えないため、提携先の税理士を紹介するのが通例です。銀行が受け取る手数料の性質は、実務そのものというより「手続きの進行管理」と「専門家の紹介」に対する対価だと指摘されています。そして紹介された税理士は、銀行から安定して案件が回ってくる仕組みの中にいます。

ケース①:地方公共団体からの紹介(収用・公共用地の取得)

道路・河川・区画整理などで土地が買い取られると、施行者(国・自治体等)が税務相談の窓口や税理士を案内してくれることがあります。ここには使い方を誤ると数百万円変わる特例が集中しています。

見落とされやすい3つのポイント

  • 5,000万円特別控除 vs 代替資産の課税繰延べ(選択制・併用不可)——買い替えを予定しているなら、繰延べの方が有利なこともあります。単純に控除を当てるだけでは最適とは限りません。
  • 6か月ルール——5,000万円控除は、最初の買取りの申出があった日から6か月を経過する日までに譲渡していないと使えません。手続きの段取りを誤ると、この大きな控除を丸ごと失います。
  • 補償金の区分——特別控除の対象になるのは原則「対価補償金」です。移転補償金などを一緒くたに譲渡所得としてしまうと、余分に課税されかねません。(公共事業用地への譲渡には、別途2,000万円以下14%等の軽減税率の道もあります)

「取得費」を5%で片づけると、税額はここまで変わる

先祖代々の土地など購入資料が見当たらない場合、取得費を「売却価格の5%(概算取得費)」とする簡便法があります。手早く終わりますが、これは実額が分からないとき“だけ”の最終手段。資料の掘り起こしや合理的な推計で実額に近づけられれば、税額は大きく下がります。補償金(対価補償金)1億5,000万円・長期・5,000万円控除は両ケースとも適用、という前提で比較します。

項目
概算取得費(5%)で処理
実額の取得費を掘り起こし
補償金(対価補償金)
概算5%150,000,000円
実額150,000,000円
取得費
概算5%7,500,000円
実額50,000,000円
5,000万円特別控除
概算5%▲50,000,000円
実額▲50,000,000円
課税譲渡所得
概算5%92,500,000円
実額50,000,000円
税額(20.315%)
概算5%約 1,879万円
実額約 1,016万円

※長期譲渡所得(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)で試算した一例。譲渡費用は考慮していません。

その差はおよそ860万円。まさに「倍近く」です。施行者の予定に合わせて“標準処理”で流されると、この掘り起こしがされないまま申告が終わってしまうことがあります。

ケース②:金融機関からの紹介(相続・遺産整理)

信託銀行などの相続手続き(遺産整理業務)は、最低手数料が110万円程度(税込)に設定され、財産額に応じておおむね0.3〜2%が上乗せされるのが一般的です。しかも、この手数料に相続税申告の税理士報酬は含まれず別途。ここでも、紹介された提携税理士に申告を任せることになります。

決定的な利益相反:信託銀行の遺産整理手数料は、多くの場合「小規模宅地等の特例などで“減額される前”の評価額」を基準に計算されます。つまり——土地の評価を下げても、特例で相続税を安くしても、銀行の取り分は1円も減りません。「評価を粘り強く下げる」動機が、そもそも働きにくい構造なのです。

土地評価は「腕」で変わる。素直な評価のままだと相続税が高止まりする

土地の相続税評価は、路線価に面積を掛けるだけではありません。不整形地の補正、地積規模の大きな宅地の評価、私道・セットバック・無道路地などの減額要素をどこまで拾えるかで、評価額は大きく変わります。件数をこなす前提の提携税理士だと、こうした減額を掘り下げず“素直な評価”に留まりがちです。

項目
素直な評価のまま
減額要素+特例を反映
評価の考え方
素直な評価路線価×地積が中心
専門家の評価不整形地補正・地積規模の大きな宅地の評価・私道評価+小規模宅地等の特例
土地の相続税評価額
素直な評価12,000万円
専門家の評価7,000万円
相続税への影響(限界税率30%と仮定)
評価差5,000万円 → 相続税で約1,500万円の差

※金額はいずれも分かりやすくした一例です。実際の評価・税額は個々の状況により異なります。

さらに信託銀行の遺産整理は、分割案づくりや二次相続対策といった“踏み込んだ助言”までは期待しにくいとも指摘されます。窓口が一本化される安心感の裏で、本来払わずに済んだ税金が積み上がっていないか——ここは冷静に見る必要があります。

POINT

資産税は「誰が、どこまで踏み込むか」で税額が数百万円変わる世界です。

そして払い過ぎた税金は、原則として申告期限から5年以内に「更正の請求」をしなければ取り戻せません。税務署は「払い過ぎ」を教えてはくれない——気づいたときには手遅れ、ということも珍しくないのです。

紹介された税理士が「悪い」わけではない。でも、一度は“あなたの側”の専門家を

誤解のないように申し上げると、役所や銀行が紹介する税理士が不誠実だ、という話ではありません。手続きを滞りなく進めてくれる価値は確かにあります。問題は立ち位置です。紹介元の都合と標準処理を優先しやすい立場の人に、あなたの税金の最適化まで全面的に委ねてしまってよいのか——という点です。

収用・公共用地の取得も、相続・遺産整理も、動く金額は「一生に一度」の大きさです。だからこそ、申告前に一度、あなたの利益だけを見る独立した専門家のセカンドオピニオンを取る価値があります。

こんなケースは要注意——申告前のチェックリスト

  • 土地が道路・公共事業などで買い取られる(または買取りの申出を受けた)
  • 「5,000万円控除」を当てるだけで、代替資産の繰延べや取得費の実額を検討していない
  • 買取りの申出から6か月が近づいているのに段取りが決まっていない
  • 相続手続きを信託銀行・金融機関に丸ごと依頼し、税理士も先方から紹介された
  • 土地の評価が路線価×面積のままで、減額補正や小規模宅地等の特例が検討されていない
  • 提示された税額に、なんとなく納得がいかない

「もう申告してしまった」という方も、諦めるのはまだ早いかもしれません。更正の請求で払い過ぎた税金を取り戻せる可能性があります。期限がありますので、心当たりのある方はお早めにご確認ください。

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OISC飯塚税務会計事務所は、収用・公共用地の取得(譲渡所得)、相続税、会社の解散に特化した資産税専門の税務会計事務所です。公認会計士・税理士の資格を持つ代表が、あなたの利益だけを見て、最初から最後まで責任を持って対応いたします。

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収用・不動産譲渡・相続・贈与・事業承継・会社の解散

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断・申告を保証するものではありません。記載の金額・税率・特例の要件・手数料はあくまで一例であり、実際の取扱いは適用時点の税法や各金融機関の規定、お客様個々の状況により異なります。特別控除・軽減税率・課税繰延べには細かな適用要件があります。具体的なご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家または所轄の税務署にご確認ください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。

公拡法や土地収用法に 「強い税理士」?

 

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公拡法や土地収用法に
「強い税理士」は存在しない

― 本当に確認すべきは、譲渡所得の特例判定です ―
譲渡所得税 公拡法 土地収用法 特別控除 税理士選び

📋 この記事の要点

  • 「公拡法に強い税理士」「土地収用法に詳しい税理士」を探す必要はない理由
  • 税理士が本当に見ているのは、その土地売却が税務上どの特例に該当するか
  • 1,500万円控除(公拡法)と5,000万円控除(収用等)の違いと判定の重要性
  • 相談前に用意しておくべき資料と、即答する税理士がむしろ危険な理由

1「公拡法に強い税理士」を探さなくていい理由

「公拡法に強い税理士を探しています」「土地収用法に詳しい税理士にお願いしたいです」――たまに、こういうご相談をいただきます。

しかし結論から言うと、公拡法や土地収用法そのものに強い税理士を探す必要はありません。というより、そんな税理士を探しても、なかなか見つかりません。なぜなら、公拡法や土地収用法は、税理士の本来業務ではないからです。

税理士が見るべきなのは、公拡法そのものでも、土地収用法そのものでもありません。税理士が見るべきなのは、その土地売却が、税務上どの特例に該当するのかです。

2税理士が見ているのは「どの特例に該当するか」

具体的には、次のような論点です。

公拡法に基づく買取り

最高1,500万円控除

  • 譲渡所得から最高1,500万円を控除できる特例の対象になる可能性
  • 国税庁の質疑事例でも、公拡法第6条の協議に基づく買取りであれば特例の適用があるとされている(国税庁)
土地収用法等に基づく譲渡

最高5,000万円控除

  • 収用等の場合の特例として、最高5,000万円の特別控除、または代替資産取得による課税の繰延べを検討
  • 国税庁も、原則としてこれらのいずれか一方の特例を選択するものと説明(国税庁)

つまり、実務上重要なのは「公拡法に強いか」ではありません。

本当に問われるのは

「公拡法に強いか」ではなく
譲渡所得の特例判定に強いか

3公拡法・土地収用法とは(簡単な整理)

公拡法は、地方公共団体等が公共用地を取得しやすくするための制度です。一定の土地を売却しようとする場合の届出や、地方公共団体等への買取申出を通じて、買取協議の機会を設ける制度です。国土交通省も、公拡法の先買い制度について、一定の土地について届出・申出を行い、買取りを希望する地方公共団体等があれば協議を行う制度であると説明しています。(国土交通省)

一方、土地収用法は、公共の利益となる事業に必要な土地等の収用・使用、その要件、手続、効果、損失補償等を定める法律です。(e-Gov 法令検索)

これらは、都市計画、公共事業、用地買収、行政手続、不動産取引、補償実務の領域であり、税理士が単独で判断すべき分野ではありません。

4税理士が確認すべきチェックポイント

🔍 税理士が確認すべき点

  • その譲渡は、通常の任意売買なのか
  • 公拡法第6条の協議に基づく買取りなのか
  • 土地収用法等に基づく収用等の対象なのか
  • 事業認定があるのか、ないのか
  • 自治体や事業施行者から、どの証明書が発行されるのか
  • 補償金の内訳は、土地の対価・建物の対価・移転補償金・営業補償か
  • 自宅部分、事業用部分、貸付部分、元事業用部分が混在していないか
  • 取得費は分かるのか
  • 過去の相続・贈与・建築・増改築の資料は残っているのか
  • 居住用財産の3,000万円控除など、他の特例との関係はどうか

ここを見誤ると、税額が大きく変わります。

5危険なのは「公共事業だから非課税」で安心するケース

特に危ないのは、自治体や事業者から「公共事業だから税金はかかりません」「特別控除が使えます」という説明を受けて、安心してしまうケースです。

⚠️ その説明は、方向性としては間違っていないこともあります。しかし実際の申告では、税理士が補償金明細・契約書・証明書・取得費資料・固定資産税資料・登記資料・図面等を確認しなければ、正確な判断はできません。

例えば、同じ公共事業でも、土地部分、建物部分、移転補償金、営業補償金、立退料的な性格の金額が混在することがあります。この内訳次第で、譲渡所得になるもの、事業所得・不動産所得・一時所得等の検討が必要になるもの、特例の対象になるもの・対象外になるものが分かれる可能性があります。

6見落としやすい論点(連年制限・特例の違い)

また、収用等の場合の5,000万円特別控除は、無条件に何度でも使える制度ではありません。国税庁は、同じ公共事業で2年以上にわたって資産を売る場合、5,000万円特別控除は最初の年だけしか受けられないと説明しています。(国税庁)

さらに、収用等の5,000万円控除と、公拡法等の1,500万円控除は、似ているようで根拠も要件も異なります。国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、収用交換等の場合の5,000万円控除、特定土地区画整理事業等の2,000万円控除、特定住宅地造成事業等の1,500万円控除は、別の特例として整理されています。(計算サイト)

💡 つまり「公拡法か、土地収用か」という入口の言葉ではなく、どの条文の、どの特例に当てはまり、それをどの資料で立証できるかを一つずつ確認することが、税額を左右します。

7探すべきは「譲渡所得に慣れた税理士」

したがって、納税者の方が探すべきなのは「公拡法に強い税理士」ではありません。探すべきなのは、

本当に探すべき税理士は

土地・建物の譲渡所得に慣れており、
公共事業・補償金・特別控除の資料確認をきちんとできる税理士

税理士に相談する際は、最低限、次の資料を用意してください。

📑 相談時に用意したい資料

  • 売買契約書
  • 補償金の内訳書
  • 自治体・事業者から交付された証明書
  • 買取りの申出・協議に関する通知書
  • 登記事項証明書
  • 固定資産税課税明細書
  • 取得時の売買契約書
  • 建築時・増改築時の資料
  • 相続や贈与で取得した場合の資料
  • 土地・建物の図面
  • 居住用・事業用・貸付用の利用状況が分かる資料

これらがないまま、「公拡法です」「土地収用です」「1,500万円控除ですか、5,000万円控除ですか」と聞かれても、まともな税理士ほど即答できません。逆に、資料も見ずに「大丈夫です。控除できます」と即答する税理士の方が危険です。

まとめ

公拡法や土地収用法に強い税理士を探す必要はありません。必要なのは、法律名に振り回されず、資料を一つずつ確認し、譲渡所得の特例適用を慎重に判断する税理士です。

公共事業による土地売却は、金額が大きくなりやすく、特例の有無で税額も大きく変わります。そのため、売却後に慌てて相談するのではなく、できれば契約前、遅くとも補償金の内訳が分かった段階で、税理士に相談することをおすすめします。

大切なのは

その譲渡が、税務上どの特例に該当し、
どの資料でそれを立証できるのか

公拡法に強いか、土地収用法に強いか。そこにこだわる必要はありません。そこを確認できる税理士に相談してください。

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公拡法の協議に応じて土地を売ったとき 使える「1,500万円特別控除」

 

ホーム > ブログ > 譲渡所得税 > 公拡法の協議買取りと1,500万円特別控除

公拡法の協議に応じて土地を売ったとき
使える「1,500万円特別控除」

📅 公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)/譲渡所得
譲渡所得税 公拡法 特別控除 土地売却 練馬区

📋 この記事でわかること

  • 公拡法の「届出 → 協議 → 買取り」の流れと、特例の前提となる手続き
  • 公拡法の協議買取りで使える譲渡所得の1,500万円特別控除(措法34条の2)の内容
  • 収用等の5,000万円特別控除との違いと、どちらが適用されるかの判断ポイント
  • 対象となる資産・連年適用の制限・添付書類など、実務上の注意点

1公拡法とは ― 届出から協議買取りまで

公拡法(公有地の拡大の推進に関する法律)は、公共のために必要な土地を、地方公共団体などが計画的に取得できるようにするための制度です。一定の土地を有償で譲り渡そうとするときは、あらかじめ届出を行い、地方公共団体等が買取りを希望すれば「協議」を経て買い取られる、という流れになります。

1

📝届出・申出(公拡法4条・5条)

一定面積以上の土地を有償で譲渡しようとする場合は事前に届出を行います。所有者から自ら買い取ってほしいと申し出ることもできます。

2

📨買取り希望の通知

地方公共団体等がその土地の取得を希望する場合、買取りを希望する旨が土地所有者に通知されます。

3

🤝協議(公拡法6条1項)

価格や条件について、土地所有者と地方公共団体等が買取りの協議を行います。この6条1項の協議に基づく買取りが、特例の前提になります。

4

🏛️協議成立・売買契約

協議が成立すれば、地方公共団体・土地開発公社等が土地を買い取ります。任意の交渉に基づく買取りである点が特徴です。

2税制上の特例 ― 1,500万円特別控除

公拡法6条1項の協議に基づいて、地方公共団体・土地開発公社等に土地が買い取られた場合、その譲渡所得の金額から最高1,500万円を控除できます。「特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除」として、租税特別措置法34条の2に定められています。

控除額

最高1,500万円

根拠条文

措法34条の2
第2項第4号

対象者

個人
(譲渡所得)

たとえば譲渡益(収入金額 − 取得費 − 譲渡費用)が1,500万円以下であれば、控除によって課税される譲渡所得をゼロにできる可能性があります。譲渡益が1,500万円を超える場合でも、超えた部分にのみ課税されるため、税負担は大きく軽減されます。

35,000万円控除(収用等)との違い

公共のための土地売却というと「5,000万円特別控除(収用等)」を思い浮かべる方が多いのですが、公拡法の協議買取りで使えるのは原則として1,500万円控除です。控除額が大きく異なるため、どちらに当たるかの見極めが重要です。

収用等の特別控除

5,000万円

  • 措法33条の4(収用等)
  • 収用権を背景とした買取り
  • 事業認定を受けた収用対象事業で、買取りに応じなければ収用される場合
公拡法の協議買取り

1,500万円

  • 措法34条の2(特定住宅地造成事業等)
  • 収用権を背景としない任意の買取り
  • 公拡法6条1項の協議に基づく買取りで、収用特例に該当しない場合
💡 判断のポイント:同じ「区や市への土地売却」でも、事業認定の有無や買取りの法的性質によって控除額が3,500万円も変わります。事業認定を受けていない事業について、市町村が公拡法6条1項の協議に基づき買い取る場合は、措法34条の2第2項第4号に該当し1,500万円控除の対象となります。一方、収用権を背景とする買取りに該当すれば5,000万円控除側です。契約前に区分を確認しておくことが極めて重要です。

4対象となる資産・要件

🗺️ 対象は「土地」の買取り

公拡法6条1項の協議に基づき、地方公共団体等に買い取られる土地が対象です。

🏚️ 建物・権利の対価は対象外

土地の上にある建物・構築物や、借地権など「土地の上に存する権利」の買取り対価には、この特別控除は適用されません。

🧑‍🤝‍🧑 共有地は持分ごとに判定

共有の土地は、各共有者の持分ごとに譲渡所得を計算します。各人が要件を満たせば、それぞれが1,500万円控除を適用できます。

5実務上の注意点

⏰ 連年適用の制限

一つの事業のために2年以上にわたって買取りが行われる場合、特別控除は最初の年の買取り分のみに適用されます。売却・引渡しの年をまたぐ場合は注意が必要です。

🔀 軽減税率との選択適用

優良住宅地の造成等のための軽減税率(措法31条の2)の対象にもなり得る場合、両特例は選択適用です。控除額と税率を試算して有利な方を選びます。

📑 確定申告で必要な書類

確定申告書に特例適用の旨を記載し、譲渡所得の内訳書(計算明細書)と、特定住宅地造成事業等に関する証明書を添付します。証明書は買取りを行う地方公共団体等から交付を受けます。

📅 申告のタイミング

土地を売った(引き渡した)年の翌年に確定申告が必要です。譲渡益が控除内に収まる場合でも、特例を受けるには申告が必要となるのが原則です。

6弊所にご依頼いただく場合の流れ

1

💬ご相談・現状確認

届出・協議の書類、買取りの提示条件、土地の取得経緯などを確認します。

2

🔍控除区分の判定

1,500万円控除と5,000万円控除のどちらに該当するか、事業内容・手続きを踏まえて判定します。

3

🧮譲渡所得の試算

取得費・譲渡費用を整理し、特例適用後の税額をシミュレーションします。取得費が不明な場合の対応もご提案します。

4

📝申告書・内訳書の作成

譲渡所得の内訳書を作成し、証明書等の添付書類を揃えて確定申告書を作成します。

5

申告・納付

電子申告を行い、納付までをサポートします。必要に応じて翌年以降の手続きもご案内します。

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