
「あの土地、忘れていませんか?」——
亡くなった人の不動産を
全国一覧で調べられる新制度、始まりました。
OISC飯塚税務会計事務所(東京都練馬区)|資産税専門の税理士・公認会計士
相続の現場で、実務家がひそかに恐れているものがあります。それが「見えない不動産」——地方の山林、代替わりで名義が残ったままの共有持分、両親も存在を忘れていた田畑。相続手続きが終わったあとに突然出てくると、遺産分割のやり直し、追加の相続税申告、10か月の期限切れ……と、家族に重い負担を残します。この“見えない不動産”を、全国一括で調べられるようになったのが、2026年2月2日から始まった「所有不動産記録証明制度」です。
この記事の結論
相続人が法務局に請求することで、被相続人が全国で所有していた不動産を一覧化した証明書が取得できるようになりました。従来は市区町村ごとに名寄帳を取り寄せる必要があり、地方の物件は完全に見落とされがちでした。相続税申告の“抜け漏れ防止”に、極めて有効な武器です。
1. なぜこの制度が必要だったのか?
相続実務における「不動産の把握」は、これまで長年、実務家の悩みのタネでした。日本の不動産登記は市区町村ごとに管理されており、被相続人がどこの土地を持っていたかを網羅的に調べる仕組みが存在しなかったからです。
実務では、「名寄帳(なよせちょう)」という市区町村ごとの固定資産一覧に頼ってきました。しかし名寄帳には次のような限界があります。
- その市区町村内の不動産しか記載されない
- 被相続人が別の市町村に土地を持っていても、存在を知らなければ請求しようがない
- 共有持分や非課税物件(山林の一部・私道等)は載らないケースがある
結果、「相続税申告が終わったあとに、遠方の共有山林が出てきた」「代替わりで存在を忘れていた田んぼが、10年後に固定資産税の督促で発覚した」といった事故が、実務では散見されていました。
2. 新制度の中身
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 所有不動産記録証明制度 |
| 開始日 | 2026年2月2日 |
| 請求先 | 法務局(オンライン請求も可能) |
| 取得できるもの | 被相続人名義の不動産を全国分一覧化した「所有不動産記録証明書」 |
| 請求できる人 | 相続人/遺言執行者/不動産所有者本人(生前は自分の分のみ) |
| 手数料 | 1件につき数百円程度(詳細は法務局公表) |
POINT 共有持分も一覧に反映される
共有物件、たとえば「兄弟で1/4ずつ相続した山林」のような持分も、被相続人名義の記録として証明書に反映されます。従来は「共有持分の存在を知っている家族しか請求できない」情報でしたが、今後は共有関係も網羅的に把握できるようになります。
3. 実務で特に効くのは、こんなケース
ケースA:遠隔地に不動産があるご家庭
ご本人は東京に住んでいるが、被相続人が地方出身で、田舎に実家・農地・山林を残していた——というパターン。相続人が正確な地番を知らないと、名寄帳の請求先すら分からず、実務では見落とされがちでした。新制度なら1回の請求で拾えます。
ケースB:数次相続・共有名義
祖父の代から相続登記されていない共有名義の土地は、権利者が何十人にも膨らみます。新制度は、被相続人の名義(持分を含む)で網羅的に検索できるため、忘れられた共有関係の発見にも有効です。
ケースC:生前の“棚卸し”
この制度は、生前にご本人が「自分名義の不動産の全容」を確認するためにも使えます。相続準備・生前整理の第一歩として、非常に強力なツールです。
⚠ 100%漏れなし、ではありません
証明書はあくまで不動産登記の記録に基づくため、次のようなケースは反映されない可能性があります。
・被相続人名義になっていない実質所有の不動産(未登記建物、名義未変更など)
・登記情報の記載ゆらぎ(氏名の変換や旧字体等)で紐づかなかった物件
・登記外の権利関係(借地権など)
従来の名寄帳・登記簿確認と併用することで、初めて確実な把握になります。
4. 相続税申告における位置づけ
相続税申告では、被相続人の全財産を把握することが大前提です。不動産の見落としは、単なる評価漏れではなく、申告漏れ=過少申告加算税+延滞税のリスクに直結します。
特に、相続税申告期限(10か月以内)を過ぎてから物件が出てくると、修正申告と遺産分割協議のやり直しが同時に必要になります。前者は税務署への追加対応、後者は相続人間の再協議——手続きコストが跳ね上がる典型例です。
POINT 相続手続きの「早い段階」で取得を
この制度の最大の効果は「見落としを防ぐ」こと。だからこそ、相続発生後の戸籍収集と並行して、早い段階で証明書を取得するのが理想です。あとから発覚する不動産は、実務では必ず「なぜもっと早く分からなかったのか」という後悔とセットになります。
こんな方は、ぜひご活用を
- 被相続人が地方出身で、実家以外の不動産の全容が分からない
- 共有名義の土地の話を、家族から断片的に聞いたことがある
- 数次相続で、祖父・曾祖父の代から未登記の物件がありそう
- 生前整理の一環として自分名義の不動産を棚卸ししておきたい
- すでに相続税申告を終えたが、後日発覚が怖い
まとめ
2026年2月に始まった「所有不動産記録証明制度」は、相続実務の風景を確実に変える改正です。従来「知らなければ辿り着けなかった」不動産に、法務局への1回の請求で全国レベルからアクセスできる——これは、相続税申告の抜け漏れ防止において非常に大きな進歩です。生前・相続後を問わず、不動産の全容把握が必要なタイミングで、真っ先に使うべきツールとしてご記憶ください。
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OISC飯塚税務会計事務所は、相続税申告と不動産財産の把握を得意とする資産税専門の事務所です。所有不動産記録証明書の請求、名寄帳・登記簿との突合、相続税申告への反映まで一貫してサポートします。初回面談は原則無料、オンライン対応可。
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※本記事は2026年時点の法務省公表資料等に基づく一般的な情報提供です。請求手続き・手数料・記載範囲は個別事情および運用の変更により異なる場合があります。証明書の取得手続き自体は司法書士業務となる場合があります。具体的なご判断にあたっては、必ず税理士・司法書士等の専門家または法務局にご確認ください。本記事の利用により生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。








